岡西研究室
研究テーマ
クモヒトデ綱の系統分類学的研究
クモヒトデ綱は約2100種が知られる海産無脊椎動物です.ヒトデ,ナマコ,ウニと同じ棘皮動物の仲間で,細長い腕を器用に折り曲げることで岩に隠れたり,サンゴなどの他の動物に絡みつくことができるため,海洋の様々な環境に適応しています.
体を構成する骨片が化石として多産し,種まで同定可能であること,古い標本からのDNA解析が可能であることから新たな環境指標生物となる可能性を持ちます.私は本グループを環境科学の研究対象とする基礎を築くため,形態・分子系統学的データに古生物・環境DNAの手法を取り入れ,多角的に系統分類体系を復元してきました.
①系統進化学的研究
国内外の標本収集活動を行い,形態とDNA情報に基づいた分類の整理を行い,新科・新属・新種・稀種の記載を行いました(Okanishi et al., 2012など).この他,地域の生物相の報告(Okanishi et al., 2016など),腕の再生過程の観察に基づくクモヒトデの腕の進化の考察(Okanishi et al., 2021)を行いました.

Astrocharis monospinosa (Okanishi & Fujita, 2011)
②古生物学的研究
神奈川県三浦市宮田層(中期更新世)と横須賀市横須賀層(後期更新世)よりアジア初の骨片化石を9種発見し堆積環境を復元しました(Okanishi et al., 2022など).現在,広島県庄原市備北層群(中新世)より産出するクモヒトデの化石を調査しています.

横須賀市横須賀層から得られた9種の骨片化石(上段)と、それに最も近いと思われる現生種の全体写真(全長数cm~20 cm)と骨片写真(Okanishi et al., 2021)。スケール(骨片)は1 mm。
③環境DNA解析
環境DNA解析:相模湾の水深250 mまでの海域で採水を行い,開発したプライマーによるメタバーコーディング解析を行いました.その結果,浅海で生息種の80%以上の配列を得て,クモヒトデが環境DNA研究の有望な材料であることを示しました(Okanishi et al., 2023).

相模湾で採集されたクモヒトデ.写真撮影:幸塚久典(東京大学)